2021/10/20
「大正は遠い昔?」
~令和3年度京都府ミュージアムフォーラム合同展覧会 -丹後から山城まで博物館大集合! 「大正の京都」-を終えて~
キーワード:博物館、京都、大正、合同展覧会、京都府ミュージアムフォーラム
執筆:若林 正博(京都学・歴彩館)
京都府内67館が参加する京都府ミュージアムフォーラムでは、参加館の所蔵品を一堂に会しての合同展覧会を昨年度に引き続き、今年度も7月17日(土)から開催しました(緊急事態宣言発令に伴い、8月19日(木)に会期を繰り上げ終了)。
「降る雪や明治は遠くなりにけり」という俳人・中村草田男の俳句があります。昭和の時代に、遠い過去になってしまった明治を回顧した俳句として知られています。昭和、平成を過ぎ、令和になった今、大正最後の大正15年でさえ、95年も前の遠い過去となりました。
しかし、展示をご覧になった方からは、「自分のふるさとのものが展示されている。ふるさとが懐かしい。」、「幼い頃に祖父母が語ってくれた地域の昔が展示品として並んでいる。」といった感想をお寄せいただきました。「大正」という時代をリアルに体験はしていなくとも、展示品と心の対話をされる中で、ふるさととのつながり、あるいは聞いた話と、展示が組み合わさり、「大正」を身近に感じていただけたようです。
ところで、展示していた『京都府滋賀県交通地図』(丹後郷土資料館所蔵)にも関連する「大正」の小ネタを一つ紹介しましょう。京都駅からJR東海道本線に乗ると、まっすぐに東へ進み、鴨川を渡り、東山トンネルを抜けて山科に達します。このルートが開かれたのが、ちょうど100年前の大正10年でした。それまでは、今の奈良線の位置を走り、深草北陵のあたりからは、今の名神高速道路の位置を走り、滋賀県へぬけていたのです。京都と滋賀を結ぶ鉄道は明治に開通していましたが、今の路線になったのは大正なのです。もし、この大正の東山トンネル開通という画期がなければ、現在の鉄道や高速道路網はかなり違う姿になっていたことでしょう。
来年度も、京都府ミュージアムフォーラムでは合同展覧会を予定しています。各館学芸員が知恵を絞って、展示品を身近に感じていただけるテーマを考えてまいりますので、どうかご期待ください。